RANGAI文庫賞受賞者発表
2024年第5回RANGAI文庫賞
第5回RANGAI文庫賞の受賞者が決まりましたのでおしらせ致します。
受賞おめでとうございます。
*受賞者1名*
◾️花尻万博(はなじり かずひろ)
俳句「南紀」
略歴 早稲田大学卒 俳句歴34年 共著(俳句オムニバス)数冊 無所属 第二回攝津幸彦賞、NHK学園全国俳句大会若い世代奨励賞、他。産経新聞和歌山欄短歌選者
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第5回目のRANGAI文庫賞は、花尻万博さんの俳句「南紀」(78句)に決まりました。全体に乾いたシュールな印象の作品群で素晴らしく、特に印象に残った句は、
次々と凍星沈む泥の中
燃え続く観光列車に夜短か
人生きて数多をこぼす海老の網
といった、映像として強くイメージの広がる句で、読んだ瞬間、背筋の伸びる思いでした。プロフィールを見ましたら攝津幸彦賞を受賞されており、産経新聞和歌山欄の短歌選者でもいらっしゃいます。RANGAI文庫賞にまた素晴らしい作品が加わり、とても嬉しく思いました。(早坂類)
作品の道具立てが特殊で、わかりやすくはないが、イメージの抽出に成功しており、従来の俳句で描けなかったものが描かれていますので、一句目から楽しめる読者は幸せです。目で文字を追った時と、声に出して読み上げたときのギャップも面白く、ふと俳句であったことを思い出すような二重露光的な世界でした。
(今田久士)
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今回、最終候補にもうひと方の詩作品が残っており非常に迷いました。何度でもチャレンジして欲しいので例年通り候補に残った方のお名前は公表しませんが、ギリギリまで迷いまして、今回、初めての俳句作品の受賞となりました。花尻さんの作品は従来の俳句からはやや離れた場所に咲いた花という印象で、RANGAIi(欄外)にふさわしく、作品としてはとても安定していますので、作品集の制作も安心して進められると思います。みなさん、楽しみにしていてください。(R)
・選考をした人・
【早坂類】RANGAI編集室長。著書に小説『ルピナス』(講談社)、短歌集『風の吹く日にベランダにいる』(河出書房新社)「早坂類自選歌集」等。青木景子名義での著書(サンリオ刊)数冊あり。
【今田久士】RANGAI文庫代表。山口県出身。旧大阪府立大学経済学部卒。吉行淳之介、色川武大、星新一、アガサクリスティーなどを読みつつ青春時代を過ごす。東京のメーカー勤務を経たのち北九州へ移住。京極堂と妖怪好き。
2023年第4回RANGAI文庫賞
第4回RANGAI文庫賞の受賞者が決まりましたのでおしらせ致します。
受賞おめでとうございます。
*受賞者1名*
◾️星埜 まひろ(Hoshino Mahiro)
「完璧な夜」 他二篇
略歴
1997年生まれ。北海道出身。槇原敬之の『モンタージュ』に影響され、9歳で作詞家を志す。遠藤徹の『姉飼』に衝撃を受け、14歳の時に小説を書き始める。現在はライター業と並行して執筆活動中。しろくまとたまごやきが好き。
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第4回目のRANGAI文庫賞は星埜まひろさんの作品に決まりました。非常に優しく淡々とした、もし宮沢賢治が転生して現代によみがえりほのかな恋の物語を書いたならこのような物語を遺すのではないかと思わせる、そんな柔らかな短編です。特別な何事かが起きるわけではありません。しかし読んでしまう。そして〈宇宙的〉な、とでも言い表したい不思議な広がりを読後、残してくれるのです。それは彼の内にひろがっている宇宙がうっかり作品の中に書き写されているからなのでしょう。第2回目の受賞者、白城マヒロさんに続き、二人目の、ひらがなの「まひろ」さんです。おめでとうございます。(早坂類)
鹿児島名物で軽羹というものがあります。捉えどころのない食感で薄っすらした甘みが、記憶に残って忘れられないお菓子です。この小品もそのようなジャンルのものです。何かの第一形態なのでしょうか? 陽だまりの雛人形を見ている様な。そして作者は雛人形を少しだけ動かしてしまいます、少しだけ。もう目が離せませんよね。でも、それっきり、なんですよ。そんな作品をポンと投げだされてしまいました。で、当方はそれを卓の上に置いておきます。みなさまよろしく御笑納ください。そして星埜まひろさん、おめでとう。家猫拝。(今田久士)
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✳︎みなさんご応募ありがとうございました。今回は複数回目の応募者が多かったので、その内のどなたかになるのではと予想していましたが、ダークホース、初投稿の星埜まひろさんの受賞となりました。最終候補作品にも複数回応募の方の作品が多く残っていましたので、次回、よりいっそう磨きをかけた作品での挑戦をお待ちしています。星埜まひろさんの受賞作品含む作品集は、仕上がり次第、こちらのサイトやSNSなどでご報告いたします。前回受賞者の石谷流花さんは受験生のため学業優先していただき作品集完成まで時間がかかっておりますが、こちらも同様に仕上がり次第お知らせいたします。(2024年12月1日 RANGAI編集室より)
2022年第3回「RANGAI文庫賞」
第3回RANGAI文庫賞の受賞者が決まりましたのでおしらせ致します。
受賞おめでとうございます。
*受賞者1名*
◾️石谷流花 詩篇「「ヘテプ・ディ・ネスウ」
略歴
平成十七年、福岡市に誕生。平成三十年頃から詩作・句作・歌作を始める。令和四年、文藝誌「退波」を発刊。短歌結社誌「塔」および「覇王樹」会員。早稲田佐賀高校在学中。
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手書きの封筒を開封し、印字された応募原稿を読み始めてすぐに、これは遠い時代、昭和初期、もしくは大正時代の詩人の作品をそっくりそのまま盗作して送ってきたのではないかと思い、しかし知らない詩だ、盗作にしても良い詩人を教えてくれたと思いながら読み通し、送り主の年齢を見て少し驚きました。それほどに古色蒼然としており、しかも柔らかく清々しく印象に残る作品でした。実は盗作ではないかという疑いはしばらく続きました。しかしどうも本物のようです。それならば推し切ろうと、この詩人に第三回RANGAI文庫賞をと決めました。ヴィンテージの香りのする作品群が一冊の詩集となって世に出る日がたのしみです。(早坂類)
なんと言ったらいいのか、久しぶりに美しい詩篇を読んだという感想です。しかし受賞作とするにはどうか、年齢的にもこの時期だけの作風なのではないかという危惧もありましたが、それにしてもよくできた作品、綺麗な通過点と言えます。早坂の推しを尊重しました。将来、詩を書き続けるにしても続けないにしても、彼には未来があります。この詩人がこれからどのような人生を送るのかを楽しみにしています。(今田久士)
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✳︎ご応募ありがとうございました。昨年同様、応募数は決して多くありませんが、少数精鋭、今回も見逃すには大変惜しい作品がありました。そのため第一回目に習い、最終候補者のお名前はあえて掲載しないことにしました。最終候補の方こそまた投稿してきて頂きたい、何度でも挑んでいただきたい、時を待ちたいという思いからです。次々に現れる才能に驚くばかりです。いっそう磨きをかけた作品を、来年もお待ちしています。(2022年12月1日・RANGAI編集室より)
2021年第2回「RANGAI文庫賞」
第2回RANGAI文庫賞の受賞者が決まりましたのでおしらせ致します。受賞おめでとうございます。
*受賞者2名*
こい瀬伊音 短編「うみせん・やません」他一篇
白城マヒロ 短編「ハイエース・オンザロード」他二篇
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今回の選考は早坂類とRANGAI代表の今田久士で行いました。
こい瀬伊音さんの短編「うみせん・やません」評
完成度高く、安定感があり読ませる。内容、文体、感性のバランスの良さを感じる。淡々と長く書いてゆける人だと思う(今田久士)
早坂が見逃していた作品の中から今田久士の推薦によって選考に残った。ごくあたりまえの生活の中の棘をよくあぶりだしておりさらさらと読める反面、読後、重い澱のようなものが残る。素晴らしい。(早坂類)
白城マヒロさん 短編「ハイエース・オンザロード」他二篇評
「ハイエース・オンザロード」は冒頭、ストーリーを把握できるまで時間がかかる。面白い内容なので冒頭のみ書きなおしてもらうことができれば全体にシュールで良いと思う。(今田久士)
「ハイエース・オンザロード」については徐々に見えてくる登場人物たちのただならぬ危うさが、昨今の不感症的な偽善やことなかれ主義を表現できていてとても面白い。他二編については再検討していただくことを前提に受賞とした。(早坂類)
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たくさんのご応募ありがとうございました。作品はみな粒ぞろいで選考は大荒れでした。ぜひ来年もチャレンジしてください。(2022年12月1日記)
白城マヒロ作品集「ハイエース・オン・ザ・ロード」直販
https://rangai.amebaownd.com/posts/42855520?categoryIds=1948629
こい瀬伊音作品集「こい瀬すーぷ」直販
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第2回「RANGAI文庫賞」最終候補作品
・白城マヒロさん 短編「ハイエース・オンザロード」他二篇
・パクチート・グミガミスキーさん 短編「ラブリーデイ」他二篇
・こい瀬伊音さん 短編「うみせん・やません」他一篇
・大田黒夏妃さん 現代詩14篇
・草野理恵子さん 詩作品25篇
・星野いのりさん 俳句「欲しかった」30句
・阿木龍一さん 短編「青い雪」他一篇
(2021年11月15日記)
2020年第1回RANGAI文庫賞
第1回RANGAI文庫賞の受賞者が決まりましたのでおしらせ致します。
*受賞者2名*
佐川 恭一(さがわ きょういち)
ショートストーリー3篇 「マルドレットの人々」「聖人」「ライジング・フォース」
沙界 夜(さかい よる)
現代詩「飢餓」「並列」他11篇
今回、第1回ということで宣伝もほぼSNS経由のみ、静かな募集でしたので応募作品数こそ少なかったのですが、全体にレベルが高く驚きました。
佐川 恭一さんの作品は意図的な文体変化の舵取りが素晴らしく、面白く、ストーリー運びも軽快、候補作として読み始めてすぐ、所謂「小説」然とした文学的ストーリーものに食傷気味の文学ファンに是非紹介したいと思わせてくれる作品でした。言葉の冒険が過ぎ、やや軽く遊びに流れすぎている作品もありますが、第1回RANGAI文庫賞応募作品に加え、佐川さんの過去作品からもRANGAI編集室にて何作か選び、2021年初頭に紙の本として刊行予定です。
沙界 夜さんの現代詩は、遠く血の香りのする仄暗い内面世界を非常に丁寧な言葉で表現しており、こちらも深く引き込まれました。まだほとんど投稿経験が無いということで、筆名も先日、編集室とのやりとりの中で決めたばかりです。2020年初頭、佐川恭一さんのショートストーリー集の少し後に、RANGAI文庫から紙の本として出版予定です。どうぞ楽しみにしていて下さい。
二名の受賞となりましたので今回、次席は無しとしました。受賞のおしらせの届かなかった方々も是非ひきつづきトライしてみて下さい。(2020年12月1日 選・早坂類)
佐川恭一短編集『ダムヤーク』
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沙界夜 詩集
『君の見ているものが僕に少しも見えなくても』
https://rangai.amebaownd.com/posts/15015932?categoryIds=1948629
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RANGAI文庫賞記念のペーパーウェイト